こんにちは。ゆう(@honkiku1)です。
2013年に駐在員としてサンフランシスコに赴任したものの赴任先の支社が倒産。半年間に渡る就職活動の末、現在はAmazonのシアトル本社でプロダクトマネージャーをしています。
そんな経験を活かし、このブログではアメリカで就職するためのポイント、アメリカでの仕事や暮らし、英語の学習方法などについて日々紹介しています。
僕がアメリカに来て、もうすぐ丸7年が経とうとしています(2020年1月現在)。
今でこそアメリカのワークスタイルにもすっかり馴染んでしまいましたが、赴任当初は日本とのあまりの違いにめちゃくちゃ苦労しました。
この記事では、その中でも特に苦労したことを5つと、僕がそれらのギャップをどう乗り越えてきたかを紹介したいと思います。
これから海外、特にアメリカに赴任予定の人や最近赴任してきたばかりの人には是非読んでいただきたいです!
アメリカ人は残業しない
初めにビックリしたのが、アメリカ人は残業を全くしないということですね。
僕が新卒で入ったのは激務で有名な外資コンサルで深夜残業なんて当たり前でしたし、転職して入った会社もコンサル出身者がたくさんいたのでほぼ同じような働き方をしていました。
毎日終電で帰るのが本当にデフォルトで、たまに早く帰る(とはいえ20時とか21時ですけど)メンバーがいると「お腹痛いんですか?」ってからかう。
そんな環境でした。
(ちなみにそれが嫌だったかって言うとそんなことは全く無くて、毎日が学園祭前夜のようでとっても楽しかったですよ。)
アメリカに駐在として赴任してきたときも僕は当然のようにそんな働き方をしようとしていたんですが、みんな全く残業しないんですね。
夕方17時にはだいたいみんな帰り、18時に残っているのはだいぶ少数。
20時にはほぼ誰もいなくなり、22時にはオフィス真っ暗。
22時なんて、日本にいた頃にはまだ宵の口。
「よーし。もうひと仕事するか!」って時間ですよ。
それがアメリカでは人っ子一人いなくなってしまうなんて・・・。
当時は「アメリカ人はなんて怠惰なんだ!」って思ってましたね・・・。
僕が日本で働いていたときに持っていた仕事のパラダイム(思い込みと呼んでもいいかもしれない)は、
- 平日の時間は全て仕事のために使うのが当然
- 予定していた仕事が終わらなければ、残業して予定通り終わらせるのが当然
- 一旦仕事が出来上がっても、時間ギリギリまで使ってクオリティを上げるのが当然
だったんですね。
でも、アメリカ人のパラダイムは
- 平日17時以降はプライベートのために使うのが当然
- 予定していた仕事が終わらなければ、スケジュールを変更するのが当然
- クオリティが及第点に達したのならそこで切り上げるのが当然
だった。
これ、別にどちらが正しいというものではなくて、単に違うというだけなんです。
ずっと日本にいて同じような環境で仕事していると、それ以外のパラダイムが存在するということに気づけなかったんですね。
この違いに気づくまでには実はけっこう時間がかかったんですが、これに気づいてからはちょっと気が楽になりました。
今では僕も普通に17時に帰ってます(笑)。
アメリカ人は締め切りを守らない
サンフランシスコに赴任して間もない頃、チーム全員にちょっとした作業を依頼したんですね。
ファイルサーバーの整理のために、各自のファイルを所定のフォルダー配下に移動しておいてね、みたいな。
金曜日の14時締め切りだよ、みたいな。
で、金曜の14時。
フタを開けてみてびっくり。
誰一人としてやってなかったんですね。
文字通り一人も。
その上、誰からも「遅れます」と言った連絡もなく。
これには本当にビックリしました。
締め切りというのは「絶対に守らなければならないもの」という考えは新卒のときに叩き込まれていましたから。
最悪でも、「締め切りに間に合わないことが分かったらできる限り早めに報告して指示を仰ぐ」ということも、社会人の基本動作として当たり前のことだと思っていました。
ビックリと同時に、「こいつらはそんな基本もできないひよっこ達なのか・・・」と、かなり落胆したのも覚えています。
ところが、よくよく彼らと話してみると、ここでもパラダイムの違いに気づきます。
僕が締め切りについて持っていたパラダイムは
- 絶対に守らなければならず、1秒でも遅れてはならないもの
- 自分ではコントロールできないもの
だったのですが、彼らにとっての締め切りはどうやら
- 「だいたいそれまでに終わらせようね」という、ざっくりとした目安
- 自分が優先度が低いと判断すれば守らなくてもいいもの
のようでした。
まあ、確かにファイルの移動なんて多少遅れても支障はありません。
とは言え、ときには「後続のタスクがあるためにきちっと守ってもらわなければ困る締め切り」というものも存在します。
そこで僕は以下のような対策を取りました。
英語の”deadline”という単語の他に”shimekiri”という単語をチームメンバーに教え、
- ざっくりとした目安としての締め切りにはdeadlineを使う
- 絶対に守って欲しい締め切りにはshimekiriを使う
ようにしました。
「Shimekiri守らなかったらHarakiriだよ(笑)」みたいに言って。
これが功を奏し、それ依頼shimekiriはきちっと守ってもらえるようになりました。
まあ、あえてshimekiriという単語を導入しなくても、依頼時に「この締め切りはこういう理由で必ず守って欲しい」とお願いすればだいたい守ってもらえると思います。
アメリカ人は上司に逆らいまくる
アメリカに来て更にビックリしたことがあります。
僕はアメリカにマネージャーとして赴任し、数人のチームをリードしていたのですが、みんな僕(上司)の意見に反論しまくるんです。
僕「こういうプロセスを導入してはどうだろう?」
部下A「いや、それは効率が悪い」
部下B「いや、それにはこの観点の検討が抜けている」
などなど。
何を言っても必ず反論されるので、当時はそれなりに落ち込みました。
「もしかして自分は嫌われているのでは?」と。
日本で上司にあれだけ面と向かって反論するってまず無かったですからね。
ところが、しばらくその環境で過ごすうちに、これもパラダイムの違いだったのだと気づきました。
僕が日本で知らず知らずのうちに持っていたパラダイムは、どうやら
- 上司の意見には基本的に従うべき
- 人の意見を否定することは、その人の人格をも否定すること
というもののようでした。
一方で、アメリカ人のパラダイムは
- アイディアは議論を通して改善すべきで、そのためにはどんどん反論すべき
- 人の意見と人格は別物
というものでした。
実際、彼らは僕のアイディアに散々意見を言った後、最終的にはそれに従ってくれていました。
彼らはただ僕のアイディアをより良くしようとしてくれていただけなのに、僕が勝手に「上司に逆らっている」と勘違いしていたんですね。
アメリカ人は資料が雑
新卒でコンサルに入って最初にやることは、議事録とパワポ資料の作成です。
分かりやすく誤解を与えない資料の作り方を徹底的に鍛えられます。
資料は一度作ると(特に良いものであればあるほど)作成者の手を離れて勝手に社内を独り歩きするので、資料単体で見てもきちんと意図が伝わるように書かなければいけません。
それが当たり前だと思っていたので、アメリカ人の作る資料を見て驚きました。
とにかく雑。雑なんです。
各スライドには要点が1〜3語ずつ箇条書きでポンポンと並んでいるだけ。
資料だけ読んでも、何が言いたいのかさっぱり分かりません。
彼らの言い分はこうでした。
- プレゼンの主役はあくまで発表者であり、スライドは補助に過ぎない
- スライドに情報を詰め込みすぎると聴衆はスライドに集中して発表者の話を聞かなくなってしまう
- スライドはプレゼンと共に使われることを想定しており、それ単体で流通したときにどう解釈されるかは知ったことではない
この考え方は全面的に否定はしませんが、スライド資料が単体で回覧されることは現実として頻繁に起きていたので、それを考慮しないというのはプロフェッショナルではありません。
特に僕のチームはデータ分析を専門とするチームだったので、その資料は経営層にまで見られる可能性があります。
ということをチームメンバーにきちんと説明して、重要データを含む資料に関しては資料単体で正確に意味が伝わるような書き方にしてもらいました。
Amazonは例外
ちなみに、Amazonではパワーポイントの使用は基本的に禁止されています(研修など大人数へのプレゼンは除く)。
資料はパワーポイントの箇条書きではなくワードの文章メインで作成され、それ単体で読んで全てを理解できるようにすることが求められます。
で、会議冒頭に参加者全員でその資料を黙読することから会議が始まります。
以前はパワーポイントも使われていたらしいのですが、あまりにスカスカで後から見ても何も分からない資料に、CEOのジェフ・ベゾスが腹を立てて禁止したのだとか。
Amazonはドキュメントを非常に重視する会社なので、かなりのライティング・リーディング能力を求められます。
僕がそれらの課題にどのように対処しているかについては、下記の記事を読んでみてください。
↓ライティングの練習方法
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↓英語資料の読み方
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↓速読の練習方法
こんにちは。ゆう(@honkiku1)です。 2013年に駐在員としてサンフランシスコに赴任したものの赴任先の支社が倒産。半年間に渡る就職活動の末、現在はAmazonのシアトル本社でプロダクトマネージャーをしています。 そんな経[…]
アメリカ人はホウレンソウをしない
ホウレンソウ。
報告・連絡・相談の略ですね。
日本では仕事の基本として、新卒時に誰もが叩き込まれます。
アメリカ人は基本的にホウレンソウをしません。
アメリカ人に一度仕事を依頼すると、日本人のように途中で進捗報告をしたりレビュー依頼が来ることもなく、最後までボールを持って突っ走ります。
出来上がったものを見てみると、自分の想定とは全く違ったものが出てきてビックリする、といったこともしばしば・・・。
こういった問題を避けるためには、以下のような対策が有効です。
- 仕事を依頼するときには、その作業内容だけでなく背景情報もしっかりと共有する
- 求める成果物のイメージが明確にあればホワイトボードなどに描いてしっかりとイメージのすり合わせをする
- 途中経過をチェックしたければあらかじめレビューミーティングを設定しておく
ただし、途中のチェックをあまりにやり過ぎると「マイクロマネジメント」だと言われて非常に嫌がられます。
アメリカ人は非常に自律性を重んじるので、問題が起きない限りはハイレベルな指示のみを与えて各自に裁量を持たせたほうが高いパフォーマンスを発揮することが多いです。
海外赴任が決まったら絶対読んで欲しい駐在員必読本
以上、僕が赴任当初苦労したアレヤコレヤと、それらをどのように乗り越えてきたかをシェアしてきました。
「乗り越えた」と偉そうに言っていますが、けっして自分一人の力だけで乗り越えられたわけではありません。
先輩駐在員の方には多くの助言をいただきましたし、それと並んで書籍からも非常に多くのヒントを得てきました。
以下に、「海外赴任が決まったら絶対読んで欲しい駐在員必読本」を挙げておきます。
どれも非常に有用だったので、今度海外赴任が決まった人、いま駐在として頑張っている人、将来海外で働きたい人など、是非一度手に取って読んでみてください!
異文化理解力
海外で働く人、外国人と仕事をする人にとって実は「語学」よりも「マナー」よりも大切なこと。
中国企業との交渉、アメリカ人上司への提案、多国籍チームのリーダーシップ…
なぜいままでのやり方が通用しない? どうしてトラブルばかりが起きる?
これからのビジネス成功の鍵は、「異文化を理解する力」。
「文化」というのは、自分がある特定の文化の中に属しているとなかなか気づきにくいものです。
この本は、「評価」や「リーダーシップ」といった文化の違いが生まれやすい「8つのマネジメント領域」について、日本を含む主要な国々がどのような違いを持っているかを説明してくれます。
海外で働く人だけでなく、日本で外国人と仕事をする機会のある人にとっても有益なアドバイスが多く含まれています。
4冊の中でどれか1つだけ選ぶならこれです。
反省しないアメリカ人をあつかう方法34
「文句が多いアメリカ人」「反省しないアメリカ人」「ほめられたいアメリカ人」――アメリカ人はどうしてそう考え、そう行動するのか。日米ビジネスのエキスパートで、経営コンサルタントのロッシェル・カップが、アメリカ人とうまく仕事するコツを大公開! 日本の企業文化を熟知し、職場の異文化コミュニケーションやグローバルビジネスをテーマに講演活動を行う、アメリカ人経営コンサルタントだからこそ書ける、「アメリカ人のあつかい方」です。
このブログの他の記事でも何度か紹介していますが、ビジネスにおけるアメリカ人の特性とその対処法を34のトピックについて解説してくれます。
アメリカに赴任してくるときに一緒に持ってきた1冊で、この本にはずいぶん助けられてきました。
Kindle Unlimitedに入っていれば無料で読めるので、加入済みの方は是非!
入っていない方も、この1冊のために入っても十分元は取れると思います!
リーダーとして話すための英語パワーフレーズ3000
ワンランク上のコミュニケーションスキルを手に入れたい人のためのビジネス英語フレーズ集! コーチングに役立つ1章分(PART10 メンバーの力を引き出すコーチング)を加えた、増補改訂版です。
アメリカ発売のオリジナル版で好評を博し、各国で発売されている本の日本版。「丁寧」な言い方から「率直」な言い方まで、各シーンで使いたいニュアンスが一瞬で選べる、独自のレイアウトを採用。使えば使うほど、表現の幅が広がっていく、実践的な一冊です。
アメリカでリーダーとして働くためには、場面に合った適切な英語表現を選ぶ必要があります。
この本ではリーダーが直面する可能性のある137の場面において、相手に与える効果の度合い別に様々な表現を紹介してくれます。
例えば自分の話に集中して欲しいとき、
丁寧な言い方:”I’m sorry to interrupt, but may I have your attention please?”
から
ぶっきらぼうな言い方:”Are you even a tiny bit interested in what I’m saying?”
まで。
各場面についていくつか覚えておけば、自分が望むより適切な表現を選ぶことができます。
出世する人の英語 アメリカ人の論理と思考習慣
ある程度の英語力があるのに、外資系企業で上司や同僚、クライアントとのコミュニケーションがうまくとれず、苦労している日本人は少なくない。「それはアメリカ人特有の考え方や思考の癖を理解していないから」と著者は言う。日本人が思うアメリカ人像と、実際のアメリカ人はかなり乖離しており、それに気づくのが遅くて出世できない日本人が非常に多いのだ。「アメリカ人は『発言すること=貢献』と思っている」「アメリカ人は日本人より時間に厳格! 」「アメリカ人に『ちょっとご挨拶に……』は通じない」等々、日本人が知らない「本当のアメリカ人」がわかるだけでなく、出世に有利な使える英語も身につく一冊。
ちょっと下世話なタイトルですが、中見は非常に有用です。
アメリカ人の考え方や思考の癖を分かりやすく説明してくれるとともに、それらを踏まえてどのように振る舞い、どのような英語を話せばアメリカや外資系企業で成功できるのかを示してくれます。
読み物感覚で気軽に読めますよ。
まとめ
以上まとめます。
- アメリカ人は基本的に残業せず、17時までにできる範囲のことをやる
- アメリカ人にとって締め切りとは「だいたいそれまでに終わらせようね」という目安に過ぎない
- アメリカ人は上司の意見に対しても積極的に反論するが、それは逆らっているわけではなく議論を通してアイディアを改善しようとしているだけ
- アメリカ人の作るパワポ資料は基本的に雑なので、用途に応じてフォーマットを使い分けるよう指導すべき
- アメリカ人には細かく支持するよりも大枠を示して後は本人の自主性に任せた方が高いパフォーマンスを発揮する
アメリカ人の仕事のパラダイムは日本人と異なります。
このパラダイムの違いを認識できず、日本のやり方だけにこだわってしまうと、うまく行かないことが多いです。
一方で、アメリカのやり方に全て従ってしまうと、日本人としてのあなたの良さが生かされないかもしれません。
違いを認識した上で、個々の状況に合わせて最適な方法を探っていくことが重要です。