プロダクトマネージャーのお仕事:KPIを使ったプロダクト改善

こんにちは。ゆう(@honkiku1)です。

2013年に駐在員としてサンフランシスコに赴任したものの赴任先の支社が倒産。半年間に渡る就職活動の末、現在はAmazonのシアトル本社でプロダクトマネージャーをしています。

そんな経験を活かし、このブログではアメリカで就職するためのポイント、アメリカでの仕事や暮らし、英語の学習方法などについて日々紹介しています。

 

さて、僕が担当しているプロダクトマネージャーの仕事の1つに「KPI(Key Performance Indicator)を使ってプロダクトを改善していく」というものがあります。

「あります」というか、プロダクトのローンチ後はこれがプロダクトマネージャーのお仕事の大きい部分を占めます

この記事では、「KPIってなにそれ美味しいの?」というところから、僕が普段どんなことに気をつけてKPIを設定しプロダクトの改善につなげているかというところまで説明していきます。

この記事を読むと、KPIを使ってプロダクトやサービスを改善するってどういうことなのかが理解できると思います。

 

KPIってなにそれ美味しいの?

KPIとはKey Performance Indicatorの略で、日本語だと「重要業績評価指標」などと訳されることが多いです。

ざっくり言うと「ものごとがうまく進んでいるかを分かりやすく示す数字」のことです。

 

イヌくん
「売上」みたいなことかな?

「売上」をKPIとして設定することもなくはないですが、多くの組織にとって売上は「最終的に達成したいゴール」となることが多いです。

そのような最終的なゴールになる数字は、特にKGI(Key Goal Indicator)と呼んでKPIとは区別します。

イメージとしては下図のように、1つのKGIの達成状況を測るために複数のKPIを設定するという関係になります。

 

例えば「売上」をKGIとしておき、その達成状況を測るために「ユーザー数」、「継続率」、「平均課金額」をKPIとして設定する、みたいな感じですね。

 

イヌくん
でも、なんでKPIなんて見る必要があるの?最終的なゴールだけ追っていればいいんじゃない?

最終的なゴールであるKGIの他にKPIを設定してトラックする目的は大きく2つあります。

  1. ゴールに至るまでのプロセスに問題が無いことを確認するため
  2. 将来起こりうる問題を早期に発見するため

 

1つは、ゴールに至るまでのプロセスに問題が無いことを確認するためです。

例えば上の例で、KGIである売上が目標金額を達成していたものの、KPIの1つである継続率が目標値を下回っていたとしましょう。

この場合、売上目標が達成できていたのは、もしかしたらユーザーの平均課金額が想定より高かったからかも知れません。

もしKGIだけ追っていると、表面上は目標が達成できてしまっているため、このような問題に気づくことができません

プロセスに問題があると、例えゴールが達成できていたとしても再現性のないものになってしまいます

 

KPIを設定するもう1つの目的は、将来起こりうる問題を早期に発見するためです。

例えば、新規ユーザーの継続率を時間軸に沿って比較したところ、最近の新規ユーザーの継続率が以前より下がってきていることに気づいたとしましょう。

売上自体は現在のところ、古くからいるユーザーに支えられてそこまで下がってはいません。

しかし、新規ユーザーの継続率が今後も下がり続けていくと、近い将来必ずユーザー数の減少、ひいては売上の減少につながります

このように、KPIが先行指標(KGIの動きに先立って動く指標のこと)として働き、将来起きる問題を事前に察知し手を打てるようになるわけです。

 

イヌくん
そもそも数字なんかに頼らなくても、良いプロダクトは作れるんじゃない?もっと感性を大事にしようよ!

自分の感覚なんてN=1(サンプル数1)でしかなく、様々な趣味嗜好を持ったユーザーの振る舞いを把握するためには、やはりデータ(数字)を見る必要があります。

自分の感覚だけに頼ったプロダクト作りをしていると、あなたと同じ感覚を持ったユーザーにしか刺さらないプロダクトになってしまいます。

また、チームで動くには、チーム全員が客観的に判断できる数字を使った方がいろいろと都合がいいわけです。

 

見るべきKPIってどうやって決めたらいいの?

KPIを使ったプロダクト改善のキモは「何をKPIとするか」です。

ダメなKPIをいくら真面目に追いかけても、改善にはつながりません。

中年男性の健康状態をチェックするために身長を測っても意味がないようなものです。

 

なので、まずは見るべきKPIの決め方を説明していきます。

KPIの決め方は、究極的にはその業界での経験などが物を言う職人技的なところがあるのは否定しませんが、ここで紹介する以下の3つのポイントを押さえておけば大ハズレはないはずです。

  1. ゴールから逆算する
  2. アクショナブルなものを選ぶ
  3. 欲張りすぎない

 

ポイント1:ゴールから逆算する

KPIを決める前に、まずは最終的なゴールと、それを指標で表したKGIを明確にします。

KPIとはあくまで、ものごとがゴールに向かって順調に進んでいるかを判断するための指標なので、ゴールが不明確だったり、そもそもゴールが無かったりしたらKPIを決めることはできません。

多くの組織にとって最終的なゴールは売上であることが多いと思いますが、プロダクトのフェーズやビジネスモデルによっては「まずは継続率を上げること」になったり「とにかく大量のユーザーを獲得・維持すること」になる可能性もあります。

 

ゴールを明確にしたら、次はそのゴールを達成するために達成しているべき条件を考えます

例えば売上を上げるためには

  • たくさんのユーザーがそのプロダクトを使ってくれること
  • ユーザーがそのプロダクトを長く継続利用してくれること
  • ユーザーがそのプロダクトに多く課金してくれること

などが必要になります。

ちなみにこれらの条件のことをKFS(Key Factor for Success)と呼んだりしますが、略語が多すぎるとわけわからなくなるので無理に覚えなくてもいいです。

 

これらの条件(KFS)を客観的に評価できる数字(指標)にしたものが、KPIになります。

例えば上で挙げた条件は、それぞれ以下のような指標(KPI候補)で評価できます。

  • 日次/週次/月次アクティブユーザー数
  • 1週間後/2週間後/1ヶ月後/3ヶ月後継続率
  • 課金率/平均課金額

 

ポイント2:アクショナブルなものを選ぶ

KPIを選ぶときには、できるだけアクショナブルなものを選ぶようにします。

アクショナブルなものとは、要するに「そのKPIを改善するために何らかの手の打ちようがあるもの」です。

上で悪いKPIの例として挙げた中年男性の身長は、いくらがんばって伸ばそうとしてもおいそれと伸ばせるものではないですよね。

一方、ウエストサイズであれば、いくらでもやりようはありそうです。

 

そういう意味では、ユーザー数というのは必ずしも良いKPIではないのかも知れません。

ユーザー数は「新規ユーザー数」、「継続率」、「離脱後復帰率」などで決まるので、こういった指標をKPIにした方が、ユーザー数をKPIにするよりも打ち手につながりやすい可能性はあります。

 

ポイント3:欲張りすぎない

KPIを設定するとき、「あれも大事、これも大事」と何でもかんでもKPIにしてはダメです。

見るべき数字が多すぎると、人は関心を払わなくなります。そのうち見るのをやめます。

特にチームでKPIを設定して改善に取り組んで行くときには、多くても両手で数えられるだけ、できれば片手に収まるようにすべきです。

 

また、「欲張りすぎない」にはもう1つ意味があって、「このユーザーも大事、あっちのユーザーも大事」と、全てのユーザーセグメントを幸せにしようとすると、結局誰も幸せにできないということになりがちです。

例えば売上のほぼ全てが初期からプロダクトを使っている古参ユーザーによって生み出されている場合、「古参ユーザーに絞ったKPIを継続チェックする」といったメリハリのあるKPI設定をすることもあります。

 

KPIを使ってどうやってプロダクトを改善するの?

KPIを使ったプロダクト改善の簡単な流れについて説明します。

 

KPIを設定する

まずは上で述べたように、KGIとKPIを設定します。

このとき、各指標の定義(データの対象範囲や計算の仕方)を明確にするとともに、各指標の目標値も設定し、チームもしくは関係者間で合意を取ります

設定したKPIを取得するために、必要に応じて分析用のログを追加し、BI(Business Intelligence)ツールでKPIを見るためのダッシュボードを作ります。

 

KPIを定期的にチェックする

KPIを定期的にチェックします。

基本的にプロダクトマネージャーは毎日数字を追うべきです。

毎日数字を見ることで数字に対する肌感覚が身につき、変化に気づきやすくなります。

 

ただ、チームにKPIをシェアするのは、毎日では少し頻繁過ぎますね。

プロダクトチーム全員がそこまで数字に興味があるわけではないので、あまりに頻繁に数字を見せると無関心につながります。

プロダクトの性質やフェーズ、チームメンバーの数字への興味によりますが、特に重要なKPIは週次、その他のKPIは隔週や月次程度の頻度でシェアするのがいいかと思います。

 

【参考】数字の見方/見せ方の注意点

数字を見る/見せるときに注意すべき点が2つあります。

  1. 比較する
  2. グラフにする

 

まず、数字は必ず比較するようにします。

数字を単体で見ても評価することはできません。

「俺、尿酸値10mg/dlだったんだ」

って言われても、それが良いのか悪いのか何とも言えませんよね。

 

でも、

「尿酸値って7.0mg/dl以下が基準値で、8.0mg/dl以上になると腎臓病や糖尿病などといった合併症が考えられるんだけど、俺の尿酸値10mg/dlだったんだ」

って言われたら、

それヤバいじゃん!

ってなりますよね。

 

比べる対象は他のプロダクトや業界平均でもいいし、同じプロダクトの異なるユーザーセグメント間で比較してもいいです。

一番簡単なのは過去との比較ですね。これを時系列での分析といいます。

 

また、数字を数字のまま見てきちんと把握できるのは、よほど数字のセンスがある人だけです。

普通の人は数字の羅列を見てもそこから何か読み取ることはまず無理ゲーです。

しかし、これも数字をグラフにしてあげることで、全体のトレンドや異常値などが直感的に把握できるようになります。

数字は必ずグラフで見せることを徹底しましょう。

 

問題が見つかったらデータを深堀りして分析する

KPIを追っていく中で問題が見つかったら、データを更に深堀りして分析して問題の真の原因(の候補/仮説)を洗い出します

今回はあまり詳しくは説明しませんが(そのうち別の記事で書きます。興味がある人は参考文献を見てみてください)、まずは問題が見つかったKPIを様々な軸(時間、場所、商品、ユーザーなどなど)で分解して、その問題がどこで起こっているのかを明確にします。

例えば平均課金額が下がっているという問題が発生していたとして、分析の軸をあれこれ入れ替えてデータを見てみたところ、ここ1ヶ月ほど(時間軸)、古参ユーザー(ユーザー軸)の課金額が低下していることが分かりました。

 

問題の所在がはっきりしたら、次はその問題がなぜ起きているのかを考えます。

ここでは「なぜを5回」などの手法を用いて、問題の原因の「仮説」を構築していきます。

 

こう言ったステップを踏まずにいきなり打ち手の検討を始めると、勘と経験に頼った運任せの問題解決にしかならず、仮にその打ち手が功を奏して問題が解決できたとしても、それはあくまで運が良かっただけで再現性の低いものになってしまいます。

 

打ち手を検討するとともにKGI&KPIを設定する

打ち手をいくつか検討したら、その中から早く実行できてなるべく効果の高そうなものから実行していきます。

この際、課題となっているKPIを新たにこの改善プロジェクトのKGIと見立て、上で説明したのと同じ要領で新しくこのKGIに対するKPIを設定します

 

例えば、古参ユーザーの課金額が低下している原因として、古参ユーザーが魅力を感じるような商品を提供できていないから(仮説)だと考え、打ち手として古参ユーザー向けのスペシャル商品の販売を行うことにしました。

このとき、古参ユーザーの平均課金額をKGIとして考えたとき、KPIとしては例えば

  • 古参ユーザーに新商品がきちんと認知されているか:新商品画面の平均表示回数
  • 古参ユーザーが新商品の購入に踏み切っているか:新商品の購入率
  • そもそも古参ユーザーがプロダクトを使っているか:ログイン回数

などを設定します。

 

打ち手を実行し、KGI&KPIで効果測定する

前ステップで考えた打ち手を実際に実行に移し、KGI及びKPIをトラックして効果を測定していきます。

これを繰り返すことでKGIを改善していきます。

 

もっと知りたい人は

非常に駆け足でしたが、KPIを使ったプロダクト改善の進め方を見てきました。

もしそれぞれのポイントについてより詳しく知りたいと思ったら、下記の参考文献を読んでみてください。

 

いちばんやさしいグロースハックの教本

いちばんやさしいグロースハックの教本
4.6

注目の成長戦略「グロースハック」の実践方法が学べる、日本初の体系的な解説書。業界の第一人者である著者が、自社製品を育てた経験をもとに、すぐに役立つ手法やフレームワークを解説します。製品やサービスを最短で収益化して成長に導くために、製品開発とマーケティングを横断しながら「成長のエンジン」を製品に埋め込むグロースハックはどうすれば実行できるのか。成長段階を5つに分ける「ARRRA」モデルや、正しいKPIの設定方法、有効な施策を導く「グロースサイクル」フレームワークなど、自社実践に基づく成長のノウハウを丁寧に解説。

 

プロダクト(Webサービスやアプリ)を成長させる「グロースハック」の手法を、ARRRAのフレームワークに沿って体系的に学べます。

KPIの設定方法についても触れられていますね。

グロースハック系の本を1冊も読んだことが無ければ、とりあえずこれを読んでおくといいと思います。

 

Tableauによる最強・最速のデータ可視化テクニック

Tableauによる最強・最速のデータ可視化テクニック
5

この1冊で生産性が劇的に向上する、全Tableauユーザーのための必携書!

Tableauは「使いやすさ」が評価され、日本でもユーザーが急増しているデータ可視化ツールです。
誰でも簡単にデータにアクセスでき、コピー&ペーストするだけで図や表、ダッシュボードを作成できます。
学生からデータサイエンティストまで、世界中のあらゆる業界・業種で採用されています。
一度レポートを作成すれば自動的に更新されるため、時間や工数を大幅に削減できる、生産性向上に直結したツールです。

本書は、もっとも効率的な方法でTableauの操作を一通りできるようになることを目的としています。
基本のチャートの作り方からダッシュボートやストーリーの作成まで、この1冊で身につきます。

 

KPIを集計してレポートにするのにはBIツールと呼ばれるツールを使うのが一般的なのですが、TableauはBIツールのデファクトスタンダードと言えるソフトウェアです。

非常に高機能な分、最初の学習コストは若干高めではありますが、最近は日本語でも入門書が何冊も出版されていて、かなり学びやすくなっています。

 

この本は、現在日本語で出版されているTableauの入門書の中ではたぶん一番オススメですね。

これ1冊でTableauの機能は一通り学べます。

データ分析に携わるのであれば、Tableauは学んでおいた方が良さそうです。

 

問題解決

問題解決
4.3

★本書の目的は「わかる」ではなく「できる」こと。単なる知識の付与でなく、読者の皆さんがそれぞれの現場で問題解決を実践し、人が動き、組織が動き、ビジネスがうまく進むことが目標です。多くの企業研修での経験を踏まえ、つまづきやすいポイントを丁寧に解説。「現場で使える」に徹底的にこだわっています。

★問題解決の手順に即してステップごとに全7章で構成。各章は「ストーリー」「解説」「まとめ」で構成。「ストーリー」で現場をリアルにイメージして問題解決の実感をつかみ、「解説」で問題解決のプロセスを整理して理解し、「まとめ」で要点をしっかりと定着させることができます。

 

コンサルブームの折に「ロジカルシンキング」や「問題解決」をテーマにした書籍はそれこそ星の数ほど出版されましたが、これが一番分かりやすくまとまっていると思います。

僕が実務で問題解決に取り組む際にも、この書籍のアプローチをベースにしています

問題解決はプロダクトマネージャーだけでなく、全てのビジネスパーソンに求められる必須のスキルです。

この本で基本を身に着け実務に応用していくことで、あなたの問題解決スキルは確実に上がりますよ!

 

まとめ

以上、KPIを使ったプロダクトの改善方法についてざっと見てきました。

簡単にまとめると以下のとおりです。

  • KPIとはものごとがうまく進んでいるかを分かりやすく示す数字
  • 最終的なゴールの数字以外にKPIを設定してチェックすることで
    • ゴールに至るまでのプロセスに問題が無いか確認できる
    • 将来起こりうる問題を早期に発見できる
  • 良いKPIを設定するためには以下が大事
    • ゴールから逆算する
    • アクショナブルなものを選ぶ
    • 欲張りすぎない
  • KPIをチェックして問題が見つかったら、データを深堀りして打ち手を検討する
  • 問題があったKPIの改善を新しいKGIとして、そのKGIに対するKPIを設定し、打ち手の効果をトラックする

 

また、プロダクトマネージャーの仕事の全体概要については下記の記事を参照してください。

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