こんにちは。ゆう(@honkiku1)です。
2013年に駐在員としてサンフランシスコに赴任したものの赴任先の支社が倒産。半年間に渡る就職活動の末、現在はAmazonのシアトル本社でプロダクトマネージャーをしています。
そんな経験を活かし、このブログではアメリカで就職するためのポイント、アメリカでの仕事や暮らし、英語の学習方法などについて日々紹介しています。
この記事では、アメリカ就職における最大の壁と言っても過言ではない、就労ビザ問題について説明します!
結論を先に言うと、アメリカの就労ビザを取るのは一筋縄では行かないから、ちゃんと戦略立てなきゃダメだよってことです。
そもそもビザってなに?
ビザは、日本語で査証と言います。
Wikipediaによると、
国家が自国民以外に対して、その人物の所持する旅券が有効であり、かつその人物が入国しても差し支えないと示す証書
のことです。要するに、その人が「入国させても大丈夫な、ちゃんとした人」かどうかを事前にチェックした証明書ですね。
これは、入国許可申請に必要な書類の一部となっています。
そうなんです。実は、アメリカを含む一部の国には、短期の観光目的であればビザ無しで入国できます。
どの国にビザ無しで入れるかは、パスポートの発行国によって決まっていて、日本はシンガポールと並んで最も多くの国(180カ国)にビザ無しで入国することができます。
これは、日本の経済水準や治安、対外政策が他国に高く評価されているということで、日本という国をここまで発展させてきてくれた先人たちのおかげです。ラッキーでしたね。
インド人の同僚なんかは、逆にどの国に行くにもビザが必要らしく、けっこう大変そうです。
ところが、ビザの免除はあくまで短期の観光目的の場合の話。
長期の滞在や就労が目的の場合には、ビザが必要になります。
あなたがアメリカのある会社に応募して、見事内定をもらったとしましょう。
アメリカに移住してその会社で働くためには、ビザが必要になりますね。
申請すれば誰でも取れるパスポートと異なり、ビザ、特にアメリカの就労ビザを取るのはめちゃくちゃ大変です。
誤解を恐れずに言えば、無理ゲーだと思います。
以下でその理由について説明していきます。
H-1Bビザ(就労ビザ)
一口にビザと言っても、様々な種類があります。
今回の例のようにアメリカの会社に直接採用されるときには、基本的にはH-1Bビザ(通称、就労ビザ)というものになります。
H-1Bビザの概要は以下のとおりです:
- 取得条件:4年制大学以上の学位(orそれに相当する実務経験)
- 職種:4大卒以上の知識を必要とする専門職で、大学の学位と関連があること
- 申請条件:申請者となるアメリカの企業が必要
- 受付開始日:毎年4月1日
- 就労可能日:同年10月1日
- 発行数:6万5,000件 + 大学院枠2万件
- 申請件数:約20万件(2018年度の場合)
- 選定方法:抽選
順番に見ていきます。
取得条件:4年制大学以上の学位(orそれに相当する実務経験)
H-1Bビザを取得するためには、4年制大学以上の学位、もしくはそれに相当する実務経験が必要となります。
「それに相当する実務経験」というのは、「俺はリアルなビジネスの現場で、大学よりも遥かに濃密な学びを得てきたぜ!」みたいなことではなく(笑)、3年間の実務経験=大学の1年間とみなされます。
なので、高卒の場合、12年間の実務経験が必要となります。
意識高い系の大学生はよく、インターンシップで入ったスタートアップに自分の居場所を見つけて、大学を中退してその会社に入社してしまったりします。
その意気込みは非常に素晴らしいし、実際の現場で鍛えられた方が大学でのほほんと過ごすよりも遥かに速く成長できるということも否定しません。
しかし、もし将来海外で働くことも視野に入れているのであれば、ビザのために大学だけは出ておいた方がいいです。
特にアメリカは、実は日本以上に学歴社会で、条件に合う学歴が無ければスタートラインに立つことすらできません。特に外国人の場合は。
ちなみに、シンガポールのEmployment Passも、同様に大卒資格が求められます。
職種:4大卒以上の知識を必要とする専門職で、大学の学位と関連があること
専門知識を必要としないような職種はダメってことですね。
高校生のアルバイトでもできるような、ファストフードの店員とかはダメということなのでしょう。
また、大学の学位と職種の関連も求められます。
日本だったら「法学部出てますけど営業やってます」って全く珍しくないですけど、そういうのはダメということです。
ここはけっこう難しくて、文系学部と文系職種だと、なかなかその関連が認めてもらえないみたいです。
なので、H-1Bは理系向けのビザと言われたりもします。
なんでこんな条件があるかというと、国外からの就労を認めるということは、本来なら自国民を雇用できる可能性のあった枠を1つ、外国人のためにつぶすということなので、「アメリカ人からでは採用するのが難しい、よっぽど専門的な仕事なんですよね?」ということを証明するためなのです。
申請条件:申請者となるアメリカの企業が必要
H-1Bビザの申請には、スポンサーと呼ばれる、ビザを申請してくれる企業が必要となります。
なので、ビザを取る前に、まずはアメリカの企業から内定をもらう必要があるのです。
とりあえずビザだけ取っておいて、それから就職先を探すということができないんですね。
ちょっとだけキナ臭い香りがしてきました。でもまだ大丈夫です。
受付開始日:毎年4月1日、就労可能日:同年10月1日
H-1Bビザの申請は、毎年4月1日に始まり、実際にビザを得て就労が可能になるのは同年の10月1日からとなります。
これは、4月1日以降ならいつでも申請できるということではありません。
後述するように、H-1Bビザは1年間に発行される件数が決まっています。
そして、申込みがこの発行限度に達すると、その年の申込は締め切られてしまうのです。
例年、だいたい5日間ぐらいで締め切られてしまうみたいですね。
なので、ビザの受付は4月1日週の1週間のみと言って間違いないでしょう。
つまり、例えば4月10日にアメリカの企業から内定がもらえたとしても、それではもう、その年のビザの申請には間に合わず、翌年までほぼ丸1年待たなければならないのです。
その上、実際に働き始められるのは10月1日からです。
つまり、採用側の企業は、最長で1年半年間待たなければ、その採用者を働かせることができないのです。
ほとんどの場合、人材を募集するときは人材が欲しい時です。
そんなに長く待たないと働かせられないような人材を雇う企業がどのくらいあるのか、はなはだ疑問ですね。
だいぶ絶望感が漂ってきましたね。でもまだあります。
発行数:6万5,000件 + 大学院枠2万件、申請件数:約20万件(2018年度の場合)、選定方法:抽選
上でも触れましたが、H-1Bビザには年間の発行枚数が決まっていて、それは6万5,000件です。
さらに、院卒者だけが申請できる大学院枠が2万件あり、合計8万5,000件が、1年間のH-1Bビザの発行可能数です。
これに対して申請は、2018年度の場合は約20万件ありました。およそ2.4倍です。
この20万件に対して、厳正な審査を行って8万5,000件に絞り込むわけでは全く無く、選定はコンピュータによる抽選によって行われます。
ええ、抽選です。
抽選が通った8万5,000件に対してのみ、その後の審査が行われます。
その上、抽選で通ったとしても、更にそこから審査で落とされることもかなりあるそうです。
H-1Bビザ取るの、実際かなり難しいと思います。
上で見てきたように、外国人がアメリカで働くには、2.4倍の抽選をくぐり抜け、学歴や職歴、職種とのマッチングなどの審査に通り、さらに最短で半年、長いと1年半、待たなければいけないのです。
そんな厄介な人材を、いったいどんな会社が採用してくれるでしょうか?
外国人がアメリカの企業を受けると、最初の電話インタビューでほぼ確実にビザのステータスについて聞かれます。
ここでビザが無いと分かれば、高い確率で不採用となってしまうのです。
まとめ
以上まとめると、
- アメリカで働くためにはビザが必要
- ビザには色々な種類があるが、アメリカ企業への直接現地採用を狙うならH-1Bビザが最も一般的
- H-1Bビザを取るためには、まずアメリカ企業から内定をもらい、次に2.4倍の抽選をくぐり抜け、審査にも通る必要がある
- その後更に半年待たないと働き始めることはできない
- そんな厄介な候補者を雇ってくれるような奇特な企業はレア
- よって、アメリカビザの取得はかなりの無理ゲー
かなり悲観的な感じに書きましたが、アメリカ就職が不可能と言っているわけではありません。
アメリカの就労ビザを取るのは一筋縄では行かないから、ちゃんとやり方を考えなきゃダメだよということをお伝えしたかったのです。
じゃあどんなやり方があるのかということについては下記の記事を参照してください。
こんにちは。ゆう(@honkiku1)です。 2013年に駐在員としてサンフランシスコに赴任したものの赴任先の支社が倒産。半年間に渡る就職活動の末、現在はAmazonのシアトル本社でプロダクトマネージャーをしています。 そんな経[…]